ろう》だ。飯《めし》は腹《はら》一|杯《ぱい》食《く》わせてあるはずだに。もっとしっかり返事《へんじ》をしねえ」
「かしこまりました」
「糠《ぬか》に釘《くぎ》ッてな、おめえのこった。――火のおこるまで一|服《ぷく》やるから、その煙草入《たばこいれ》を、こっちへよこしねえ」
「へえ」
「なぜ煙管《きせる》を取《と》らねえんだ」
「へえ」
「それ、蛍火《ほたるび》ほどの火《ひ》もねえじゃねえか。何《な》んで煙草《たばこ》をつけるんだ」
相手《あいて》は黙々《もくもく》とした少年《しょうねん》だが、由斎《ゆうさい》は、たとえにある箸《はし》の揚《あ》げおろしに、何《なに》か小言《こごと》をいわないではいられない性分《しょうぶん》なのであろう。殆《ほと》んど立続《たてつづ》けに口小言《くちこごと》をいいながら、胡坐《あぐら》の上《うえ》にかけた古《ふる》い浅黄《あさぎ》のきれをはずすと、火口箱《ほぐちばこ》を引《ひ》き寄《よ》せて、鉄《てつ》の長煙管《ながきせる》をぐつ[#「ぐつ」に傍点]と銜《くわ》えた。
勝手元《かってもと》では、頻《しき》りにばたばたと七|輪《りん》の下《した》を煽
前へ
次へ
全263ページ中102ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
邦枝 完二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング