も速《はや》く人《ひと》に聞《き》かせたいとの自慢《じまん》からであろう。玉《たま》のような汗《あせ》を額《ひたい》にためながら、いずれもいい気持《きもち》でしゃべり続《つづ》ける面白《おもしろ》さ。中《なか》には、顔《かお》さえ洗《あら》やもう用《よう》はねえと、流《なが》しのまん中《なか》に頑張《がんば》って、四|斗樽《とだる》のような体《からだ》を、あっちへ曲《ま》げ、こっちへ伸《のば》して、隣近所《となりきんじょ》へ泡《あわ》を飛《と》ばす暇《ひま》な隠居《いんきょ》や、膏薬《こうやく》だらけの背中《せなか》を見《み》せて、弘法灸《こうぼうきゅう》の効能《こうのう》を、相手《あいて》構《かま》わず吹《ふ》き散《ちら》す半病人《はんびょうにん》もある有様《ありさま》。湯屋《ゆや》は朝《あさ》から寄合所《よりあいしょ》のように賑《にぎ》わいを見《み》せていた。
「長兄《ちょうあに》イ。聞《き》いたか」
「何《なに》を」
「何《なに》をじゃねえ、千|吉《きち》がしこたま儲《もう》けたッて話《はなし》をよ」
「うんにゃ。聞《き》かねえよ」
「迂濶《うかつ》だな」
「だっておめえ、知《し》らねえもなァ仕方《しかた》がねえや。――いってえ、あの怠《なま》け者《もの》が、どこでそんなに儲《もう》けやがったたんだ」
「どこッたっておめえ、そいつが、てえそうないかさま[#「いかさま」に傍点]なんだぜ」
「ふうん、奴《やつ》にそんな器用《きよう》なことが出来《でき》るのかい」
「相手《あいて》がいいんだ」
「椋鳥《むくどり》か」
「ちゃきちゃきの江戸《えど》っ子《こ》よ」
「はァてな、江戸《えど》っ子《こ》が、奴《やつ》のいかさま[#「いかさま」に傍点]に引《ひ》ッかかるたァおかしいじゃねえか」
「いかさま[#「いかさま」に傍点]ッたって、おめえ、丁半《ちょうはん》じゃねえぜ」
「ほう、さいころ[#「さいころ」に傍点]じゃねえのかい」
「女《おんな》が餌《えさ》だ」
「女《おんな》。――」
「相手《あいて》を釣《つ》って儲《もう》けたのよ」
「そいつァ尚更《なおさら》初耳《はつみみ》だ。――その相手《あいて》ッてな、どこの誰《だれ》よ」
「油町《あぶらちょう》の紙問屋《かみどんや》、橘屋《たちばなや》の若旦那《わかだんな》だ」
「ほう、そいつァおもしれえ」
「あれだ。おもしれえ
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