は気《き》の毒《どく》だぜ。千|吉《きち》は妹《いもうと》のおせんを餌《えさ》にして、若旦那《わかだんな》から、二十五|両《りょう》という大金《たいきん》をせしめやがったんだ」
「なに二十五|両《りょう》だって」
「どうだ。てえしたもんだろう」
「冗談《じょうだん》じゃねえ。二十五|両《りょう》といやァ、小判《こばん》が二十五|枚《まい》だぜ。こいつが二|両《りょう》とか、二|両《りょう》二|分《ぶ》とかいうンなら、まだしも話《はなし》の筋《すじ》が通《とお》るが、二十五|両《りょう》は飛《と》んでもねえ。あいつの首《くび》を引換《ひきかえ》にしたって、借《か》りられる金《かね》じゃァねえぜ。冗談《じょうだん》も休《やす》み休《やす》みいってくんねえ」
「ふん、知《し》らねえッてもなァおッかねえや。おいらァ現《げん》にたった今《いま》、この二つの眼《め》で、睨《にら》んで来《き》たばかりなんだ。山吹色《やまぶきいろ》で二十五|枚《まい》、滅多《めった》に見《み》られるかさ[#「かさ」に傍点]じゃァねえて」
「ふふふふ、金《きん》の字《じ》。その話《はなし》をもうちっと委《くわ》しく聞《き》かせねえか」
そういいながら、柘榴口《ざくろぐち》から、にゅッと首《くび》を出《だ》したのは、絵師《えし》の春重《はるしげ》だった。
「春重《はるしげ》さん、お前《まえ》さんいたのかい」
「いたから顔《かお》を出《だ》したんだがの。大分《だいぶ》話《はなし》が面白《おもしろ》そうじゃねえか」
春重《はるしげ》は、もう一|度《ど》ニヤリと笑《わら》った。
四
「ふふふふ、金《きん》の字《じ》、なんで急《きゅう》に唖《おし》のように黙《だま》り込《こ》んじゃったんだ。話《はな》して聞《き》かせねえな。どうせおめえの腹《はら》が痛《いた》む訳《わけ》でもあるめえしよ」
柘榴口《ざくろぐち》から流《なが》しへ出《で》て来《き》た春重《はるしげ》の様子《ようす》には、いつも通《とお》りの、妙《みょう》な粘《ねば》りッ気《け》が絡《から》みついていて、傘屋《かさや》の金蔵《きんぞう》の心持《こころもち》を、ぞッとする程《ほど》暗《くら》くさせずにはおかなかった。
「てえした面白《おもしれ》え話《はなし》でもねえからよ」
「なに面白《おもしろ》くねえことがあるもんか。二十五|両
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