けつ》笑いしてから、上原なんかと行ってしまいました。
周囲には、女の選手達、殊《こと》にちびの中村さんも居ましたので、ぼくは完全に度を失い、立ち去ろうとすると、中村さんが、少女らしく、傍《そば》にいる七番の坂本さんに、「ぼんちは身体《からだ》が大きいけれど、弱いの」と訊《たず》ねます。坂本さんは、ぼくをからかうように、「大坂《ダイハン》は温和《おとな》しいもんな」と笑います。すると隣《となり》にいた沢村さんが、大きな声で、「青大将なのよ」とぼくのいちばん嫌《きら》う綽名《あだな》を呼んでから、気持よさそうに笑い出しました。「まあ、青大将」誰《だれ》か、女のひとが、そう言って、くすッと笑うのに、羞恥《しゅうち》で消え入りそうになりながら、ぼくは漸《ようや》く、そこから逃《に》げ出したのです。
ひとりで、暗い海を暫《しばら》くみてから、寝《ね》に帰ろうと、喫煙室《きつえんしつ》のなかを通り抜けていると、一隅《いちぐう》で沢村、森、松山、東海さん達が、麻雀《マアジャン》をやっていましたが、「おい、おい」と河村さんが、ぼくを呼びとめます。
どうせまた、嘲弄《ちょうろう》されるとおもいまし
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