。おまけに、あなた達はパンツ一枚なのですから、太股《ふともも》の紅潮した筋肉が張りきって、プリプリ律動するのがみえ、ぼくはすっかり駄目《だめ》になり、ほうほうの態《てい》で、退却《たいきゃく》したことがあります。
午後は、ぼく達の棒引が終ってから、あなたがたの練習をみるのが、また楽しみでした。
殊《こと》に、あなたのアマゾンヌの様な、トレエニング・パンツの姿が、A甲板の端から此方まで、風をきって疾走《しっそう》してくる。それも、ひどく真剣な顔が汗みどろになっているのが、一種異様な美しさでした。
(視《み》よ、わが愛する者の姿みゆ。視よ、山をとび、丘《おか》を躍《おど》りこえ来る。わが愛する者は※[#「※」は「けものへん」の右に「章」、31−11]《しか》のごとく、また小鹿のごとし)
紫紺《しこん》のセエタアの胸高いあたりに、紅《あか》く、Nippon と縫《ぬ》いとりし、踝《くるぶし》まで同じ色のパンツをはいて、足音をきこえぬくらいの速さで、ゴオルに躍りこむ。と、すこし離《はな》れている、ぼくにさえ聞えるほどの激《はげ》しい動悸《どうき》、粒々《つぶつぶ》の汗が、小麦色に陽焼《ひ
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