守られていたのは、初めの二三日でした。――ぶらついていると、「オーイ、活動が一等の食堂にあるぞオ」と誰《だれ》かが叫《さけ》んで、四五人、駆《か》けて行きました。「行って見ようや」とぼくは村川を誘《さそ》い、KOの二番の柴山《しばやま》、補欠《サブ》の河堀とも一緒《いっしょ》になって、デッキを降り、食堂に入って行きますと、映画は始まっていて、代表選手の練習を集めた実写物らしく女子選手のダイビングが、空中に美しい弓なりの弧《こ》を描《えが》いているところでした。
ぼく達、ボオトの場景が最後《ラスト》を飾《かざ》り、観《み》ていれば、撮影《さつえい》された覚えもある荒川《あらかわ》放水路、蘆《あし》の茂《しげ》みも、川面《かわも》の漣《さざなみ》も、すべて強烈《きょうれつ》な斜陽《しゃよう》の逆光線に、輝《かがや》いているなかを、エイト・オアス・シェルの影画《シルエット》が、キラキラする水を鋭《するど》く切り、凄《すさ》まじい速さで、進んでゆくのでした。影画のようなオォルでも、上げれば、水泡《すいほう》と、飛沫《しぶき》が、同時に光ります。「いいなア」と誰かが溜息《ためいき》をついていま
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