》っていた京人形みたいな女給をちょっと好きになって、「君の名前は」とか訊いているうち、いきなり背後から生温かい腕《うで》がペたっと頸《くび》のまわりに巻きつきました。振返《ふりかえ》ると熱柿《じゅくし》みたいな臭《にお》いをぷんぷんさせたN子です。「聞いたわよ、坂本さん、船のなかで女のひとと凄《すご》かったんですッてねエ」「ああ」とぼくは素直です。「こんなお婆《ばあ》ちゃんじゃ、嫌《きら》い」とN子はぼくの頸にぶら下がったまま、ぼくの膝《ひざ》に坐り、白粉《おしろい》と紅の顔をぼくの胸におしつけます。
 実をいうとぼくは肉体の快感もあって、こういう酩酊《めいてい》の為方《しかた》も好《い》いなあ、と思いかけていましたが、便所に立った虎《とら》さんが帰って来て、「オイ表に出てみろよ、大変な貼出《はりだ》しが出ているぜ、ハッハッハ」と豪傑《ごうけつ》笑いをするので、清さんと一緒に出てみますと、入口に立てかけた大看板に(只今オリムピックボオト選手一同御来店中)と墨痕《ぼっこん》鮮《あざ》やかに書いてあります。
 しばらく唖然《あぜん》と突っ立っていたぼくは、折から身体を押《お》して行く銀座
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