なたが陸上の川北氏と話をしていました。
 思いきったぼくは臆面《おくめん》もなく、あなた達の間に割りこみました。あなたは泣いたあとの汚い顔はしていたけれど、なにか頼りなげな可憐《かれん》な風がありました。
 ぼくは不作法にも突然《とつぜん》あなたに向い、口を切りました。「どうしたんですか。一体、熊本さん」あなたは顔をあげ、ひどく泣きじゃくりながら、話しだしました。このひとは未《ま》だ少女ではないか、それを汚れた眼鏡でみるなんて、と、ぼくは憤慨《ふんがい》しながら、あなたの話を聞いていました。
「昨夜六時頃、Bデッキを散歩していますとネルチンスキイさんが、笑いながら傍によってきて、よくは判らないんですけれど、光るものと言うから多分夜光虫でしょう、をみせてあげるからボオト・デッキに行こうッて言うのでしょう。わたし一人で、嫌《いや》だったから断ると、無理に、そりゃしつこく誘《さそ》うのでしょ。内田さんがいてくれたら、気が強いんですけれど、心細いのにね。相手が外国のひとで、よく言葉が解《わか》らないから、若《も》し失礼になったら――と思って、ついて行ったんです。そしたら、ボオト・デッキに上って
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