で一寸と口を切ってから、また落着いた嗄《しゃが》れ声にかえり「然《しか》し、実際女の選手ってだらしがねエな」と村川を顧《かえり》みれば、村川も即座《そくざ》に、「じッせえ、女流選手っていうのは、なっちゃいないね」と合槌《あいづち》を打ちます。ぼくは無責任な批評をするな、と腹がたちましたが、金沢は続いて無造作に、「しかし誰かに言い触らすようなことはしないよ。それは約束《やくそく》します」という。その言い方に、ぼくはふッと、彼の大人を感じると、なにか信用して好い気になり、安心すると同時に、一遍《いっぺん》に気恥《きはず》かしくなってきて急いで、彼の部屋を辞しました。
 無茶苦茶に駆《か》けあるきたいような衝動《しょうどう》にかられて、階段をかけ上って行くと、森さん、松山さん、沢村さん達がいずれ麻雀《マアジャン》でも果てたあとか、たくましく笑い合って降りて来かかり、血走ったぼくの様子をみると、顔見合せて、更《さら》にどっと笑いたてました。
 てッきり、あなたの一件で笑われたと、ぼくは尚更《なおさら》、口惜《くや》しがって、あなたを捜しまわりましたが、その晩は遂《つい》に見つからず、また不眠《
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