もいさぎよく揃《そろ》って丸坊主になり、謹慎《きんしん》の意を表したとのことでした。

     二十五

 横浜まで、あと一週間という日になった。
 プロムナアド・デッキの手摺《てすり》に凭《よ》りかかって海に唾《つば》を吐《は》いていると、うしろから肩《かた》を叩《たた》かれ、振返《ふりかえ》ると丸坊主《まるぼうず》になりたての柴山でした。
 彼《かれ》はひどく真面目《まじめ》ぶった顔付で「坂本君、熊本さんのことでなにか聞いたか」と訊《たず》ねます。「いや別に」と答えると声をひそめ、「大変なことがあるんだ。これが公《おおや》けになったら熊本さんの一生は台なしだよ。君はあんなにして特に親しいから、君からいっペん忠告してやれよ」と親切にお節介《せっかい》を焼いてくれます。ぼくは息づまるほどのショックを受け柴山をみつめていました。
「昨夜なア、うちの河堀と金沢が、ボオト・デッキで涼《すず》んでいたら、暗い蔭《かげ》になったほうでガサゴソ物音がするんだそうだ。なんだとおもってみてたら、熊本秋子とネルチンスキイの奴《やつ》が二人ッきりで腕《うで》を組んで出てきた。それで、此方《こっち》で見て
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