力のある子供っぽい愛くるしい顔をしている癖《くせ》に、コケットの様な濃厚《のうこう》なお化粧《けしょう》をいつもしていました。
そこでぼくは彼女達《かのじょたち》に婉然《えんぜん》と頼まれると、唯々諾々《いいだくだく》としてひき受け、その夜は首をひねって、彼女の桃色《ももいろ》のノオトに書きも書いたり、――かにかくに太平洋に星多き夜はともすれば人の恋しき――から始まり――海の上《へ》のノオトは浪《なみ》が消しゆきぬこのかなしみは誰が消すらむ――に終る、面皰《にきび》だらけの歌を十首ばかり作りあげ、翌日M嬢に手渡そうとおもいました。
面皰といえば思いだす、面白い話があります。同船していたブラジル人で十五歳位の女の子がいて、それが大分早熟で、体操のKさんの跡《あと》ばかり追っていました。
或るときブリッジの蔭《かげ》で、Kさんの名前を呼び喚《わめ》いている女の子が、あまり一生懸命《いっしょうけんめい》に呼び探しているので、「ヘェイ、ぼくと遊ぼう」と覚束《おぼつか》ない英語でからかうと、女の子は急に貴婦人のように取り澄《す》まし、しげしげ、ぼくの顔をみていましたが、いきなり唇《くちびる
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