かにもこそばゆいという風に身悶《みもだ》えしてキャッキャッと笑い興じていました。汗《あせ》ばんで転がるたびに砂|塗《まみ》れになってゆく、上原の肉体も、額に髪が絡《から》みついた顔も、だんだん紅潮してゆくに従って、筋肉の線に、膨《ふく》らみもでて来て美しく、ぼく達でさえ些《いささ》か色情的に悩《なや》ましさを覚えたほどです。しかし何時迄《いつまで》もみているのは莫迦々々《ばかばか》しくなって、ぼくと柴山はその場をはずし、なんとなくそこらを散歩してから歩いて帰りました。
 遅《おそ》く夕方になってから戻《もど》ってきた上原が、その大学生の着ていたレザァコオトを貰ったりしているので、ぼくは人間の愛欲の複雑さがちらっと判《わか》った気がしました。

 帰朝する前日でしたか、ロオタリイ倶楽部《クラブ》での、鐘《ベル》ばかり鳴らしてはその度《たび》に立ったり坐《すわ》ったりする学者ばかりのしかつめらしい招待会から帰ってくると、在留|邦人《ほうじん》の歓送会が、夕方から都ホテルであるとのことで、出迎《でむか》えの自動車も来ていて、直《す》ぐとんで行ったのでした。
 男はタキシイド、女は紋服《もんぷ
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