た。ひとりで、ホテルの裏にでると、ダンス場があって、ちょうどヒリッピン人の会合があり、彼等《かれら》が、勝手放題に、淫《みだ》らな踊り方をしたり、または木蔭《こかげ》で抱擁《ほうよう》し合っているのをみると、急に淋《さび》しく、あなたが欲《ほ》しくてたまらなくなるのでした。

 試合《ゲエム》が済んだあとでは、みんな、各自、県人会のひとに案内して貰ったり、または自分達同士でロスアンゼルスに遊びに行ったりしては、やれ今日は飛行機に乗ったとか、秘密のキャバレエで酒を飲まされたとか、レビュウガアルのアパアトで三十|弗《ドル》もとられたとか、そんな話の種を持って帰っては、面白そうに話しあうのでしたが、ぼくはまた、独りぽっちの仕様ことなしに、近所の子供と遊んだり、子供達から自転車を借りて乗りまわしたり、ただあてもなく散歩したり、そんな無為《むい》な日々をすごすことが多かった。

 いまでも憶《おも》いだす、なつかしい路《みち》は、合宿裏の花壇《かだん》にかこまれた鋪道《ほどう》のことです。
 ジギタリス、アネモネ、グラジオラス、サフラン、そんな花々につつまれて、一日中、陽《ひ》があたっている明る
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