うな建物に、貧富《ひんぷ》の懸隔《けんかく》につき、考えさせられることも多かった。
聖林《ハリウッド》に入ると、フォオド・シボレエを自動車《カア》ではなく機械《マシン》だと称する国だけあって、ぼく達の車も見劣《みおと》りするような瀟洒《しょうしゃ》な自動車が一杯《いっぱい》で、建物も白堊《はくあ》や銀色に塗られたのが多く、光り耀《かがや》くような街でした。ぼく達はフォックス撮影所《スタディオ》の前で降り、所内の見物からはじめました。セットに、山あり海あり、冬景色あり夏景色あり、汽船あり、汽車あり、支那街《シナがい》あり水の都ナポリありで、ぼくは歩いている中、なにか、サンボリストの詩みたいなものを感じ、ひどく興奮しました。
昼食を、所長さんの御招待で頂き、サアビスに踊《おど》ってくれたのが、当時のスタア、ロジタ・モレノ嬢《じょう》でした。まるで、人形のような端正《たんせい》さと、牡鹿《めじか》のような溌刺《はつらつ》さで、現実世界にこんな造り物のような、艶《あで》やかに綺麗《きれい》な女のひとも住むものかと、ぼくは呆然《ぼうぜん》、口をあけて見ていました。最後に、ステップ、ウインク、
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