降りだしました。いっそ、地の底までもと思ったのに、着いたところは、又さっきの部屋で、男女二人は、まだ抱《だ》きあっていて、余計、堪《たま》らなく、飛びだそうとした刹那《せつな》、ふいに、その若い二人が、夢《ゆめ》の中のあなたとぼくのように、錯覚《さっかく》され、もう一度、振りかえり、見定めるため近づいてみようかとさえ思ったことでした。
日本の選手一同、車を連ねて聖林《ハリウッド》見物に行ったのもその頃《ころ》でした。
車は全部、在留|邦人《ほうじん》の方々の御好意《ごこうい》で、提供して頂き、スマアトな中級車から、豪奢《ごうしゃ》な高級車ばかり。ぼくの乗せて頂いたのも、華奢《きゃしゃ》な白塗《しろぬ》りのリンカン・ジェフアで、車内に、ラジオも、シガレット・ライタアも装備《そうび》してある豪勢《ごうせい》さでした。
途中《とちゅう》、サンキスト・オレンジのたわわに実る陽光|眩《まば》ゆい南カルホルニアの平野を疾駆《しっく》、処々に働いている日本人農夫の襤褸《ぼろ》ながらも、平和に、尊い姿を拝見《はいけん》しました。
有名なパサデナの邸宅街《ていたくがい》を通り、御殿《ごてん》のよ
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