切ったように泣きだしました。
 すると主将の八郎さんが、かつてみない激しさで「泣くな。勝ってから、泣け」と噛《か》みつくように叱《しか》った。
 その激しい言葉に、自己感傷に溺《おぼ》れかけていたぼくは、身体が慄《ふる》えるほど、鞭《むち》うたれたのです。

 第二回戦《セカンドヒイト》は、独逸《ドイツ》、加奈陀《カナダ》、新西蘭《ニュウジイランド》とぶつかり、これも日本は、第三着で、到頭《とうとう》、準決勝戦に出る資格を失ったのでした。

     十八

 レエスも済み、為《な》すべきことを失ったようなぼくは、あなたのことを、やっと具体的に考える機会に恵《めぐ》まれた訳ですが、ぼくの心の卑《いや》しさからか、遠すぎるあなたの代りは、身近くのあてもない享楽《きょうらく》を求めて、彷徨《さまよい》あるき、なにかの幸福を手掴《てづか》みにしたい焦慮《しょうりょ》に、身悶《みもだ》えしながら、遂々《とうとう》帰国の日まで過してしまいました。
 帰国するまでに、約二週間はありましたから、その間、羅府《ロスアンゼルス》のブロオドウェイを、或《ある》いは、ロングビイチの下町を、又《また》はマウン
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