wains.)とぼく達は彼地《あちら》の新聞に、一言で、かたづけられていたものです。
総《あら》ゆる人種からなる、十三万人の観衆に包まれた開会式《オオプニングセレモニイ》は、南カルホルニアの晴れ渡《わた》った群青《ぐんじょう》の空に、数百羽の白鳩《しろばと》をはなち、その白い影《かげ》が点々と、碧玻璃《へきはり》のような空に消えて行く頃《ころ》、炎々《えんえん》と燃えあがった塔上《とうじょう》の聖火に、おなじく塔上の聖火に立った七人の喇叭手《らっぱしゅ》が、厳《おごそ》かに吹奏《すいそう》する嚠喨《りゅうりょう》たる喇叭の音、その余韻《よいん》も未だ消えない中、荘重《そうちょう》に聖歌を合唱し始めた、スタンドに立ち並《なら》ぶ三千人の白衣の合唱団、その歌声に始まって行ったのでした。
ぼくは、その風景を、男子の本懐《ほんかい》だと、感動して、眺《なが》めていた。殊に、あの日、塔上に仰《あお》いだ万国旗のなかの、日の丸の、きわだった美しさは、幼いマルキストではあったぼくですが、にじむような美しさで、瞳《ひとみ》にのこりました。身体《からだ》がふるえる程《ほど》、それは強烈な印象でした。
前へ
次へ
全188ページ中116ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 英光 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング