むすめ》のお母さんは、すこし眼に険のある美人でしたが、恐《おそろ》しく早口で捲舌《まきじた》に喋《しゃべ》るので、なにを言うやら、さっぱり判《わか》らず、いつもぼくは面喰《めんくら》いました。帰国のとき、ぼくは、この少女に、持って行った浴衣《カルナモク》を、一枚上げたところ、早速、その別嬪《べっぴん》のお母さんが着て、見送りに出ていたのには、苦笑させられたものです。
十六
練習が終り、みんな、素《す》ッ裸《ぱだか》で、シャワルウムに飛びこみ、頭から、ザアザアお湯を浴びているうち、一人が、当時の流行歌(マドロスの恋《こい》)を※[#二重かっこ開く]赤い夕陽《ゆうひ》の海に、歌うは、恋のうウた※[#二重かっこ閉じ]と歌いだし、皆《みんな》で、賑《にぎ》やかに合唱していると、直《す》ぐ隣《となり》の部屋から、太いバスの仏蘭西《フランス》語が※[#二重かっこ開く]セネ、カル、シャントプウ、アキタルポウ※[#二重かっこ閉じ]と同じ歌を、突然《とつぜん》、謡《うた》いだしたのには、驚《おどろ》きもしましたが、嬉《うれ》しくもなって、皆|一緒《いっしょ》に、両国語の合唱が始まったので
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