]」と可愛《かわい》い声で叫《さけ》びます。十歳位の少年ですが、ぼくとは気が合って、彼《かれ》の家にも引張って行かれ、二間位のせせこましい家に、いっぱいに置かれたオルガンで、下手糞《へたくそ》なスワニイ河をきかされたり、やさしいお母さんにも紹介《しょうかい》して貰《もら》いお茶《コオヒイ》[#「お茶」にルビ]を頂いたり、または彼氏|自慢《じまん》の映画スタアのサイン入りのブロマイドを何枚となく、貰ったことがあります。
 その朝、ぼくの様子が気になるのか、彼氏はまた仕草《ジェスチュア》で、ぼくの肩《かた》を叩《たた》き、「なんでも打明けてくれ」というのです。「金をおとした」と答えると「いくら」と訊《き》き、金額を話すと「オウ」と眉《まゆ》を顰《しか》めたり、肩をすぼめたり、おおげさに愕《おどろ》いてみせ、一緒《いっしょ》に捜《さが》しに行く、といいはってきかないのです。
 とうとう、二|粁《キロ》もあるゴルフ場まで、ついて来て、朝露《あさつゆ》に濡《ぬ》れた芝生の上を、口笛吹《くちぶえふ》き吹き、探してくれました。ぼくは勿論《もちろん》、一生懸命《いっしょうけんめい》で、隅《すみ》から隅
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