さようなら
田中英光

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)袂別《べいべつ》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)生理的|厭悪感《えんおかん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)さまよえる和蘭人[#「さまよえる和蘭人」に《フライング・ダッジマン》のルビ]

底本のダブルミニュートは、「“」と「”」に置き換えた。
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「グッドバイ」「オォルボァル」「アヂュウ」「アウフビタゼエヘン」「ツァイチェン」「アロハ」等々――。
 右はすべて外国語の「さようなら」だが、その何れにも(また逢う日まで)とか(神が汝の為にあれ)との祈りや願いを同時に意味し、日本の「さようなら」のもつ諦観的な語感とは比較にならぬほど人間臭いし明るくもある。「さようなら」とは、さようならなくてはならぬ故、お別れしますというだけの、敗北的な無常観に貫ぬかれた、いかにもあっさり死の世界を選ぶ、いままでの日本人らしい袂別《べいべつ》な言葉だ。
「人生足別離」とは唐詩選の一句。それを井伏さんが、「サヨナラダケガ人生ダ」と訳し、太宰さんが絶筆、「グッド
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