れてきた娘が、高等教育を受けた、未来のある青年に愛され正式な結婚をしたことに、救われた如き感謝があり、献身的盲目的にその青年を愛するというのは、やはり通俗小説の嘘で、現実的には貧しく無知な女はそれだけ世の中から傷つけられ歪みっぽく疑い易い野良猫じみた性質になっていて、ぼくはそんな妻の復讐心《ふくしゅうしん》に自分の才能を無心に誇っては噛みつかれ、不用意に彼女を救ったと仄《ほの》めかしただけでも爪をたてられ、一日として彼女を妻にしたことに悔いのなかった生活はなかった。そこに戦争、出征が続いたので殺伐とした軍隊の雰囲気から、ぼくのほうにそんな妻でも稀に逢ったり、慰問品を送られると天使のように優しい錯覚があり、妻のほうにも、出征軍人の妻との無知な悲しみと誇りがあり、ふたりの家庭の破綻《はたん》が一時、防がれたばかりか、出征や疎開の前後に子供が四人まで生まれる結果となったが、さて敗戦になり、平和な日を迎えると、十年前になら恐らくふたりだけの別離で済んだ家庭の悲劇が、戦いの嵐に目かくしされ、十年いきのばされたお蔭で、四人の子供たちという堪えがたい犠牲者を伴なう大破局に発展してしまった。
敗戦と
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