女として尊敬されるようになっていました。女たちは、絶えず彼女を訪ねて来ます。相談をもって来ます。自分たちの間でとか、あるいは男たちを相手にしていさかいが起ると、「そんなことをいったって、キーシュのお母さんはこういっておいでだったよ」ときめつけて、相手をへこますのでした。

  五

 しかし、村の人たちの一番気になることは、何といってもキーシュの不思議な狩の秘密でした。
 そこで寄合の席では、ある晩、長い相談のあとで、キーシュの狩の方法を知るために、彼が狩に出てゆく時に、しのびの者に後をつけさせようということに相談がきまりました。やがて、彼が次の狩に出る時、ビムとバウンという二人の若者が、見つからないようにして彼の後をつけてゆきました。二人とも腕に覚《おぼえ》のある狩人でした。五日たってから、二人は目をまわして帰って来ました。そして、自分たちが見て来たことを話すとき、二人の舌はふるえました。
「皆《みな》の衆《しゅう》! いいつけられた通り、わしらはキーシュのあとをつけていったよ、やつ[#「やつ」に傍点]に気がつかれないようにうまくやってな。はじめの日のひる頃まで歩くとあの子は大きな雄
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