うになりました。彼をつぎの頭《かしら》にしようという話さえ起って来ました。こうなってみると、皆は彼がまた寄合《よりあい》に出てくれればよいと思うようになりました。しかし彼はどうしても出て来ません。皆の方では前のことがあるので出てもらいたいと頼むことが出来ないで困っていました。
 ある日、キーシュは頭や村の狩人たちにいいました。
「僕は雪小屋を建てたいと思っているんですがね。僕とお母さんが居心地よく暮せる大きな雪小屋でなくっちゃいけないんです」
「うん」
 皆は真剣な顔をしてうなずきました。
「けれども僕には暇《ひま》がないんです。僕の仕事は狩だ。狩でちっとも暇がないんです。僕の取って来る肉を食べてる村の男の人たちや女の人たちが、僕に雪小屋を建ててくれないでしょうか」
 そこで、村の頭の住居《すまい》よりも大がかりな雪小屋が出来あがりました。キーシュとお母さんはそこへ移りました。これはお母さんにとって、夫に死にわかれてこの方、はじめての満足でした。
 しかし、大きな家に住めるというようなことだけが彼女のよろこびではありませんでした。彼女は、すばらしいむすこのお蔭で、いつの間にか村で一番の
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