したらすぐに幾つかに切り放しておかなければならないのです。そうしないと、肉はかちかちに凍《こお》ってしまって、どうすることも出来なくなるのです。ところが、キーシュにいわれた場所へ着いてみると、皆の疑っていた熊の死がいがあったばかりでなく、彼は一人前の狩人がやる通り、その三頭の熊を、それぞれ四つに切り放し、ちゃんとはらわたまでぬいておいたことが分かったので、みんなはびっくりしてしまいました。
 そしてキーシュのような子供が、どうしてこんなすばらしい狩が出来たかという不思議は、だんだん深くなるばかりでした。しかしキーシュはそんなことにはかまわず狩をつづけました。すぐ次の狩に出た時には、彼はほとんどおとなになりきった若い熊を殺し、またその次には大きな雄熊《おすぐま》とその連《つれ》の雌熊《めすぐま》とを殺しました。彼の狩はたいてい三四日がかりでしたが、一週間くらい氷原《ひょうげん》へ出ていったきりのことも、めずらしくはありませんでした。
 狩に出る時には、彼はいつも人をつれてゆくことを断《ことわ》りました。それを皆はまた不思議に思うのでした。
 そのうちに、あれは魔法だといううわさが村にひろ
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