けの子熊が二匹だ」
母親の喜びようったらありませんでした。しかし彼はお母さんの喜びを男らしい様子でうけとめました。
「お母さん、さア食べましょう。それから眠らせて下さい。僕、くたびれているんですから」
それから彼は自分の雪小屋へはいって、十分に食べ、そのあとで二十時間もつづけて眠りました。
村人たちにはいろいろな疑問が起りました。それから果《はて》しもない議論がつづきました。北極熊を殺すのは非常に危険なことです。殊《こと》に子熊をつれた母熊を殺すのは、普通の三倍も、いや三倍の三倍も危険なことです。男たちは少年キーシュがたった一人でそんなえらいことを仕遂《しと》げたとは、なんとしても信じられませんでした。
しかし、女たちは彼が背負って来た生々しい肉のことをいい立てます。男たちが信じまいとしても、目で見た事実にはかないません。そこで、男たちは、たとえキーシュのいうことがほんとうだとしても、あいつは倒した獣をちゃんと始末して来なかったにちがいない、そいつが困りものだ、などとぶつぶついいながら、とうとう出かけてゆきました。
男たちがなぜそんな心配をしたかというと、北極地方では、獣を殺
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