ちがいないんだ。熊があんなに苦しがっているのは全く見たことがないよ!」
「そうだとも、おれだって見たことはないよ。それに、あんな大きな熊だものなア」
 バウンもそう調子を合わせました。
「やっぱり魔法だ」
 一人の男がいいました。
 するとバウンが答えました。
「それは分からない。ただおれはこの目で見ただけのことを話してるんだよ。いいかね、そのうちに熊はくたびれて弱って来た。そりゃそうだろう、ひどく重い体をしているくせに、無茶苦茶に暴《あば》れまわったんだからな。それからやっこさん、頭を右左へふらふらさせたり、時々坐り込んじゃキューキューいってみたり、泣いたりしながら、海っぱたの氷について歩いてゆく。するとキーシュもゆっくりと熊についてゆくんだ。わしらもキーシュのあとへくっついていったのさ。そうやってその日一日と、あと三日のあいだわしらは歩きつづけたもんだ。熊は弱ったけれど、痛さのためになかなか泣きやまなかったよ」
 さっきの男がまた叫びました。
「まじないだ。まじないにちがいない」
「そうかも知れない。だが、まア聞け――」
 そこでまたビムがバウンに代りました。
「熊はうろつきまわっ
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