しちゃア小さな丸い球をおっことす。熊は幾度でもそいつを呑み込んじまうんだ」
 信じられない、おかしな話だという声が一座に起りました。それを聞いていた一人の男は、そんなバカなことがあってたまるものかといい出しました。
「わしらアこの目で見て来たんだ」
 ビムは保証しました。
 するとバウンもすぐ口を添《そ》えました。
「そうだとも、この目で見て来たんだ。で、そいつをつづけているうちに、急に熊がまっすぐに突立《つった》ちあがり、弓のように体をまげて、痛がってうなりたてて、気が変になったようにまえあしを振りまわし始めたもんだ。キーシュは氷の上をすっ飛んで、熊の手が届《とど》かないところまで逃げて、平気な顔でその様子を眺めているんだ。だが熊はもうあの子になんざ、かまっていない、小さな丸い球のために、体の中に起った苦しみで、夢中なんだからね」
 ビムがそこでまた口を出しました。
「そうだ、たしかに体の中だ。自分の体を引っ掻《か》きむしり、ふざけてる小犬のように氷の上を転がりまわるんだからな。うなったりキューキューいったりする様子を見ていると、どうしたってふざけてるんじゃなくて、痛くてたまらないに
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