歌劇「ドンブラコ」
本居長世氏作 喜歌劇「浮れ達磨」
宝塚少女歌劇団作 ダンス「胡蝶の舞」
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 このように上演脚本も選定せられて、配役も決定し、公演の練習に没頭した。それも、三月二十日から三十一日にいたる十二日間を、連日舞台稽古に費したというほどの慎重さをもって、いよいよ四月一日、処女公演の幕を開けた。
 今日から考えると、それは温泉場の余興として生れたとはいうものの、日本劇壇の一つの新分野を開拓するものでもあった。それはやがて新国民劇として大成する芽生えが、微かにその双芽を覗かせていたのである。

        糊と鋏で出来上った脚本

 この処女公演は四月一日から五月三十日まで公開されたのであるが、その間には、いろいろ困った、といっても、またなかなか面白い話もあった。
 はじめの頃は安藤君の作品が多かったが、その中でも、初期上演の「音楽カフェー」は代表的なもので、安藤君が作曲し、脚本も書いた。
 あるレストランがあって、そこで何かのときに女給がお皿を叩いたり、フォークで調子をとって陽気に唄い騒ぐ、そういうハーモニーを考えて一つの歌劇をつくり上げたのだ。
 
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