内務大臣官邸はこれ/\で、』と、官民斬りつ斬られつの修羅《しゅら》を話された。『では、袋を外し、竿|剥《む》き出しにして、往きませう』と言ふと、『それが好《い》いでせう』と、賛成してくれるので、篤《あつ》く礼を述べて別れ、それから、竿の袋を剥き、魚籃を通して担ぎ、百雷の様な吶喊《とっかん》の声、暗夜の磯の怒濤《どとう》の様な闘錚《とうじょう》の声を、遠く聞きながら無難に過ぎることが出来た。若《も》し、奇特者の忠告無く、前の様で、うッかり通ッたもんなら、何様《どん》な奇禍を買ッたか知れなかッたが」と言へり。危《あやう》かりしことかな。
浅草公園の公開? 釣堀
六日の夜は、流言の如く、又焼打の騒ぎあり、翌七日には、市内全く無警察の象《しょう》を現はしけるが、浅草公園の池にては、咎むる者の無きを機《き》とし、鯉《こい》釣大繁昌との報を得たり。釣道《つりどう》の記念に、一見せざるべからずとなし、昼飯後直ちに、入谷《いりや》光月町を通り、十二階下より、公園第六区の池の端《はた》に、漫歩遊観《まんぽゆうかん》を試みたり。
到り観れば、話しに勝《まさ》る大繁昌にて、池の周囲には、立錐の余地
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