元日の釣
石井研堂
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)例《ためし》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)亦|中《あた》りぬ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)飛※[#「風にょう+昜」、第3水準1−94−7]《ひよう》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)うと/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
上
元日[#「元日」に傍点]に雨降りし例《ためし》なしといふ諺は、今年も亦|中《あた》りぬ。朝の内、淡雲|天《そら》を蔽ひたりしが、九時ごろよりは、如何にも春らしき快晴、日は小斎の障子一杯に射して、眩しき程明るく、暖かさは丁度四五月ごろの陽気なり。
数人一緒に落合ひたりし年始客の、一人残らず帰り尽せるにぞ、今まで高笑ひや何かにて陽気なりし跡は、急に静かになりぬ。
机の前の座に着けば、常には、書損じの反故《ほご》、用の済みし雑書など、山の如く積み重なりて、其の一方は崩れかゝり、満面塵に
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