幕ニと理想とに結び付けらるゝに従つて精神的に豊富なる状態が次第に実現せらるゝであらう。男子の事業は比較的人生の個人的方面に従属し生存努力となり分化となつて人生の進歩と革新とを促がしてゐる。これに反して女子の事業は人世の社会的方面に属し団結的粘着力を現はしてゐる。女子はビヨルンソンの云つた様に『次第に人生に入込み来つた』暖かき感情のよりよき掩護《えんご》者である。かくの如き議論はかの甲乙の差別によつて天秤の価値を上下するが如きものではない。
 亜米利加主義は人生の全ての問題を極めて低級な立場から論じてゐる。而して婦人問題の如きも其の主眼とする処は自己維持にあると見做してゐる。自己維持といふことは男子にも女子にも単に権威ある人間の存在に対する初歩の外面的先要条件である。未来の社会主義がとるべき最も必要なる第一階梯は各人の最も得意とする仕事によつて自己維持の機会を万人に与ふることである。かくの如くして始めて各自の仕事はその人の幸福を増進するものとなるであらう。この理由から云つてもかくの如き仕事は社会に最大の価値を齎らすものである。而して今より更らに深き修養により、これらの事に対する吾人の洞察
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