に只だ外部の事にのみ力瘤が入れられたのであつた。併し現今では若き恋人等が通常自己の運命を定める時には、如何に豊富な色彩ある新しき精神的感覚、情緒、感動を示すかは彼等の霊性を洞察するの特権を有する人々には明かである。最も精神的な女子は自己の撰択に対して最も個人主義的な意志を現はしてゐる。若し彼女の情熱が呼び醒される前に男子の熱い息が額にかかる様なことがあればその男子の慾望の微かな予感すら彼女の感情を枯してしまふであらう。而して高尚な青年の間にもそれに対する同一の意志が徐々に発達し静かに自己の撰択すべき女子を待ち望んでゐる。そうして女子よりも迅速に進む慾求を止めてゐる。
これ等の青年男女は既に長途の旅程を経過し、恋愛を通過して『自からを投げ出す』危険には陥ることがないのである。約言すれば、自由が開放した其勢力が自由の危険なる結果を防止してゐるのである[#「自由が開放した其勢力が自由の危険なる結果を防止してゐるのである」に傍点]。
『恋愛と結婚』の中に性的関係が普遍にして決断的なる意義と神聖を以て飾られなければならないといふ確信を私はこんな風に云ひ表はした。――恋愛は曾《かつ》て諸国民が敬
前へ
次へ
全54ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ケイ エレン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング