れたような駭きとともに、犯人の異形な呪文が現われ出たのだった。
 そこで、四つの創形を云うと、そのうちの二つは左右上膊部の外側、即ち肩口から二寸ほど下方にあって、残り二つは、左右腰骨の突起部、即ち大臀筋の三角部だった。何れも、人体横側の最高凸出部であり、その位置も左右ともに等しく、尚、その上下の一対が、垂直線の両端に位しているのが注目されるが、何よりの駭きと云うのは、明瞭な字紋様の創形と、それに到底人間業とは思われない――恰度精巧な轆轤で、刳り上げたような一致が現われている事であって、またその二つが、左右とも微細な点に至るまで符合しているのだった。それをなお詳細に云うと、上膊部のものは、最初上向きになった鋭い鉤様のものを打ち込んだらしく、創底が三|糎《センチ》程の深さになっていて、それを上方に向けて刳りながら次第に浅くなって行き、全体が六|糎《センチ》程の長さで、※[#底本が「訶」と注記した梵字(fig45230_01.png)、187−下−22]の形になって終っている。次に腰辺のものは、※[#底本が「口+羅」と注記した梵字(fig45230_02.png)、187−下−23]の形をな
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