たのである。それから滝人は、刻々血が失われていくような、真蒼な顔をしながら、その結論を、心の中の十四郎に云い聴かせはじめた。
「私は、自分の浅墓《あさはか》な悦《よろこ》びを考えると、じつに無限と云っていいくらい、胸の中が憐憫《あわれみ》で一杯になってしまうのです。お怨みしますわ――この酷《ひど》い誓言を私に要求したのが、ほかならぬ貴方《あなた》なのですから。あの獣臭い骸《むくろ》だけを私に残しておいて、いずこかへ飛び去っておしまいになり、そのうえご自分の抜骸《ぬけがら》に、こんな意地悪い仕草《しぐさ》をさせるなんて、あまりと云えば皮肉ではございませんか。今までも、ときおり貴方の小さな跫音《あしおと》を聴いて、私は何度か不安になりましたけれども、いよいよ今日という今日は、貴方の影法師をしっかと見てとりました。救護所で発した高代という言葉は、まさしく不意の明るみが因《もと》で、鵜飼の腸綿《ひゃくひろ》から放たれたものに相違ございません。そして、いま時江さんが耳にしたものは、貴方が催眠中、お母様の瞳に映った文字を読んだからなのです。ねえこれと同じ例が、仏蘭西《フランス》の心理学者ジャストロ
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