な声で、嫂《あね》に云った。
「それでは、何もかもお話しいたしますが、お嫂《ねえ》さま、貴女それを、兄にだまっていて頂けますか。実を云いますと、いつも御霊《みたま》所の中で、母と対座しておりますうちに、兄は時折、その高代という言葉を口にするのです。私はそれを聴くと、もしやお嫂《ねえ》さま以外にも、兄の胸の中にある人がいるのではないかと考えられて、先刻《さっき》も先刻、大兄の仕打ちがあまり酷《ひど》いと思われたものですから、つい私、むらむらと口にしてしまったのです。ねえお嫂《ねえ》さま、もうこの谿間《たにあい》に来てしまった以上は、なんと云っても、遠い別世界の話なんでございますからね。どうか、お怒りにならないでくださいましな。もしかして兄の耳に、私のいらず口でも入った日には、ほんとうにそれこそ、私、どんな目に遇わされないとも限りませんわ。ねえ、それだけは固い約束をして、ねえお嫂さま」
と兄の粗暴な復讐《ふくしゅう》を懼《おそ》れて、時江はひたすら哀願するのだったが、なぜかその時は、いったん下りかけた滝人の頸《くび》が、中途でハタと止まってしまった。滝人はじっと眼を瞑《と》じたまま、それ
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