たものが、てっきり卓子灯《スタンド》の台としか思えないじゃありませんか。そこで時江さん、貴女にも、ちょうどそれと同じものが仔鹿《かよ》の頸《くび》にあったのです。熊鷹に抉り抜かれた――というあの一言が、鹿子色をした頸先のほうに、一つの孔《あな》のような斑《まだら》を作ってしまったのでしたね。ですから、その全体が、高《たか》の字を半分から截《た》ち割ったように思われて、いまでは十四郎が、どうしても遇うことのできない、高代という女の名が連想されてきたのでした。そうすると時江さん……」と滝人は、双眼に異様な熱情を罩《こ》め、野獣のような吐息を吐きながら、時江に迫った。
「貴女には、けっして知るはずのない隧道《とんねる》の秘密を、いったいどうして知ったのです。十四郎が話したのでさえなければ……。ああ、あの男に、もしやすると、鵜飼の意識が蘇《よみがえ》ってきたのではないかしら」
 そうして、滝人の心の中で、いろいろなものが絡《から》みはじめてくると、それまで数年間の疲労が一時に発し、もはや座にいたたまれぬような眩暈《めまい》を覚えてきた。すると、時江は怯々《おずおず》と顔を上げ、低いかすれたよう
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