、良い油井《ウエル》に出逢ったのが、三十のときだった。ところがね、遮水管《ウエーク・ストリング》の抜き出し処置がわるく、火花をおこして焼けてしまったのですよ。ねえ、若いころは、誰にも夢がある。それが、五十になった今、蘇《よみがえ》ってくるなんて」
と、だんだんセルカークは恐ろしげな顔になってゆく。しめた、と、折竹がほくそ笑むところへ、
「じゃ、なんでしょう。『大地軸孔』の怪焔も、おなじ意味合いのもんで」
「そうです。あれも、『大盲谷』中の一つの覗き穴です。しかし、大盲谷をうずめる全部の油量は? セルカークさん、測れますかね」
と、唆《そそ》るようにセルカークの顔をみる、折竹も相当の役者ではないか。俺を放て……そして、大塩沙漠《ダシュト・イ・カヴィル》へやり、覗き穴を探させろ……そうすりゃ、セルカークは億万長者になれる。いや、億どころか、百兆、千兆。いずれは、英蘭銀行《バンク》がお前の紙幣《さつ》で埋まるだろう……ここだ、一生の運を掴《つか》むか掴まないか※[#疑問符感嘆符、1−8−77]
するとその時、おなじ思いはセルカークにも、こいつを、釈放したら、どんな事になる※[#疑問符感
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