八〇くらいの、おそらく航空用燃料《ギャス》としたら空前のやつが、あの地下には無尽蔵にあるのです」
見えない魔焔の正体が各国ともあせっている、高オクタン価の良質油とは。が、折竹の粟粒のような汗。ここが、助かるか助からないかの瀬戸際という意気が、目にも顔にも、燃えるように漲《みなぎ》っている。案の定、セルカークは恍《うっと》りとした声で、
「航空用良質油《ギャス》」
とたった一言、それを、折竹が追っかけるように、
「そこで、あの沙漠に噴出孔があるか、ないか。たぶん、地軸までもというような、裂け目があるだろう。多量の天然ガスを絶えず噴きだしている、地底までの穴がきっとあるにちがいない。しかも、それが大盲谷へ達している。と、僕はこう睨《にら》んでいるのです。ねえ、地下からの採油も乙なもんですぜ」
「航空用良質油《ギャス》」
とセルカークがふたたび呻いた。折竹がならべるでたらめもさすが彼だけに整然たるもの。それが駆りたてる夢幻黄金境。いまやセルカークは大欲にうめいている。
「儂もむかしは、汲出機《ギロウ・ウァーク》[#「汲出機」は底本では「汲山機」]をもって、掘りあるいたもんでした。そして
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