なく生洒々《いけしゃあしゃあ》として、
「時に、ここは何というところで……」
「なるほど」
とセルカークは冷酷そうな笑いをうかべ、
「ご自分の、墓になる所だけはご存知なくてはなりますまい。ジェベル・カスルン。付近には製油所があります」
それなり、暫くはなんの声もなかったのである。夜の沙漠の冷々としたなかで、にぶい灯りが二人を照らしている。ちょっと、折竹のからだが顫《ふる》えたようにみえた。墓――※[#疑問符感嘆符、1−8−77] なん度胸に問うてもおなじ意味の答えを、彼はぼんやりと味わっていた。死ぬ、そうとすれば、どんな理由で……。
「とにかく、危険な存在は殺《や》らにゃなりませんでな。あなたは、アフガニスタンのダワダール[#「ダワダール」は底本では「クワダール」]で降りて、『大地軸孔』へゆくつもり……ねえ」
「いや、大変なちがいだ。このまま僕は、ずうっと本国へ帰る」
「ハッハッハッハッ、こっちでそう信じている以上、釈明は要りません。つまり、あなたをあの『大地軸孔』へは遣りたくない――その意味はお分りだろうと思います。あの辺のすべてが不明であるということが、わがインドの貴重な守りに
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