ゃ、どこだ? その、新発見の北極の島ってえやつは」と言うと、折竹はいけぞんざいに手をふって、違う、と嘲けるように言う。
「島じゃない。その無主の地というのは、グリーンランドの内部《なか》だ」
驚いた。現実を無視するにもこれほど痛快なものに、私はまだ出会ったことがない。
全島、ヨーク岬をのぞくほかデンマーク領のグリーンランド──。よしんば内部《なか》が、「|冥路の国《セル・ミク・シュア》」をふくむ広茫《こうぼう》の未踏地とはいえ、沿岸を占めれば自然奥地も領地となる──国際法には奥地主義の法則がある。それでは、先占|云々《うんぬん》の余地は完全にないではないか。無主の地はたとえ一坪たりと、いま北極圏の大島グリーンランドにはないのだ。それにもかかわらず……。
と、いうところが「死体駆る橇《そり》」とともに、「|冥路の国《セル・ミク・シュア》」探検の大眼目になっている。しかしこれは、暫《しばら》く興味上保留することにして、では、そこを先占しようとしたのは、いずれの国であろう。訊くと、折竹は紅潮さえもうかべ、
「どこって※[#疑問符感嘆符、1−8−77] それが他の国ならいう必要のないこと
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