たお》された。それは、疑う余地もないルチアノ一味の仕業。
 三、では、ルチアノ一味はどこからその情報を手に入れたか。クルトは、清廉《せいれん》頑検事のロングウェル氏に話したのみと言うが、そのロングウェル氏はルチアノ一派の対敵──その辺の消息が、皆目分っていない。また、その地へルチアノ一味が食指を動かしているというについては、なにか驚くべき富源のようなものがなければならない。しかしもう、その事についても怪無電の真相も、すべてはクルトが墓場へ持っていってしまっている。
 と、踏み彷徨《さまよ》うような当て途もない気持のなかで、なんだか折竹は魔境の呼び声をうけてくる。謎を解く、それもクルトへの弔い合戦か。と、腰を抜かしたようなケプナラを促がしながら、やっと彼は死人のそばから腰をあげたのだ。
 その数日後、彼はロングウェル氏に逢った。しかし、加害者の見当についても直接証拠のないかぎり、ここの、州刑法ではどうにもならない。ただ、クルトの死を無駄にさせたくない──この点では完全な一致をみたのだ。
 ルチアノ一味を、向うにまわして「|冥路の国《セル・ミク・シュア》」を踏破する。怪無電の謎を解き魔境征
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