。一つは、人も知る奥アマゾン、さらにオリノコ川の上流もその一つだろうし、また、南端へゆけばパタゴニア地方にも、恐竜の全化石などがでる未踏地がある。そうして、第四がこのグラン・チャコなのだ。
 南緯二十度から二十七度辺にまでかけ、アルゼンチン、パラグァイ、ボリヴィアの三か国にわたり、密林あり、沼沢《しょうたく》あり、平原ありという、いわゆる庭園魔境の名のグラン・チャコ。そこは奇獣珍虫が群をなして棲《す》み、まだ、学者はおろか、“Mattaco《マツタコ》”印度人《インディアン》でさえも、奥地へは往ったことがないというほどの場所だ。
 「で、そのグラン・チャコのなかに“Pilcomayo《ピルコマヨ》”という川がある」とカムポスが淀《よど》みなく続けてゆく。
 「それは、フォルモサの密林の北をながれて、ながらくパラグァイ、アルゼンチン両国の境界争いの場所だったことは、諸君も知っておることだろう。たがいに、川の南北に陣どって堡塁《フオルチネス》をきずき、いまなお一触即発の形勢にある。では、その境界争いはなんのために起ったか。貪ろうとしたのか? それとも、条文の不備か? 何のためかというに、そ
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