Aメリカ地理学協会の依頼で探検には加わらず、もっぱらここで採集に従っていたのだ。すると、その第三次「天母生上の雲湖《ハーモ・サムバ・チョウ》[#ルビは「天母生上の雲湖」にかかる]」探検の犠牲者のなかに、 "Kellett《ケレット》" 全覆式《ケビン》オートジャイロの操縦者でタマス木戸という、彼の腹心ともいう二世の青年がいたのである。折竹が、それに気付いたときの失意のさまといったら、剛毅《ごうき》な彼とはとうてい思えなかったほどだ。木戸は飛行中「天母生上の雲湖《ハーモ・サムバ・チョウ》[#ルビは「天母生上の雲湖」にかかる]」の主峰の雲にひき込まれたのだ。
「とにかく、木戸君を酷使した嫌いがあったかもしれん。しかし、それは上空からの偵察で登攀《とうはん》の手がかりを見つけにゃならんし、じつに、飛行回数百二十一という記録だった。ところが、白、黄、青の三外輪はひっきりなしの雪崩《なだれ》だ。ただ紅蓮峰《リム・ボー・チェ》の大氷河だけに口が空いているが、そこは、君も知る大烈風が吹き下している」
その夜――。インドのビルマちかい巨竹の森のここでは、ぷんぷんジャングルの風が腐竹のにおいを送ってくる
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