{道をゆかねばならぬ。
ところが、三年をついやし三回の攻撃を続けても、ついにダネックらは紅蓮峰《リム・ボー・チェ》の裾の、大氷河を越えることはできなかった。そこを、吹きおろす風は七十メートルを越え、伏しても、はるか谿底《たにそこ》へ飛ばされてしまうのだ。――以上が私の、「天母生上の雲湖《ハーモ・サムバ・チョウ》[#ルビは「天母生上の雲湖」にかかる]」についての貧しい知識である。それへ折竹が、三回の探検による科学的成果と、偶然、彼が発見した新|援蒋《えんしょう》ルートの話を加える。
「ではまず、本談に入るまえにだね。ダネックの、失敗中にも収穫があったことを話しておこう。それは、バダジャッカのある洪積層の谿谷から、前世界犀《リノツエロス・アンチクス》の完全な化石が発見されたことだ。こいつは、高さが十八フィートもあるおそろしい動物で、まだそのころは犀角もなく、皮膚も今とちがってすべすべとしていた。ところが、こいつがいたのが二十万年ほどまえの、第三紀時代のちょうど中ごろなんだ。洪積層は、それから十万年もあとだよ。すると、後代の地層中にいる気遣《きづか》いのない生物がいるとなると、当然まだ、『
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