Eリヴァ》に運ばれて地中に落ちこんだ。それは地中より湧《わ》きいで地中に消える暗黒河であった。
なん時間後か、なん日後か、とにかく私は闇のなかで目をさました。おそろしい冷気、冥路《よみじ》というのはこれかなと思ったほどだ。そしてどこかに、滝があるような水流の轟《とどろ》きがする。しかし、まだ私が死んでないということは、やがてからだを動かそうとしたときはっきりと分った。節々が灼けるように疼《うず》くのだ。私は、それでもやっと起きあがった。手さぐりで、からだを探ってみると雑嚢《ざつのう》がある。なかには、ライターもあり固形アルコールもある。――ああ、この、短い鉛筆でくわしくは書けない。
そこで、服地をすこし破いて固形アルコールで燃すと、ぐるりがぼんやり分ってきた。何処もかもが真白にみえる。目を疑った。すると、天井から雪のようなものが落ちてきた。甜《な》めて見ると唇につうんと辛味を感じた。それでやっと分った。私は砂川《サンド・リヴァ》から岩塩の層に落ちこんだのだ。地下水が岩塩を溶かしてつくる塩の洞窟だ。マヌエラ、あなたには想像もできまい。まるで月世界の山脈か砂丘のような起伏、石筍《せきじ
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