である。
 赤い、地獄のような土がぼろぼろに焼けて、たまに草地があると思えばおそろしい流沙であった。そしてそこから、雨期には川になる砂川《サンド・リヴァ》が現われ、絶壁のちかくで地中に消えている。
「有難うカーク、どれほど君のために助かったことだろう」
「ほんとうですわ」
 座間とマヌエラが真底から感謝した。それは、きて以来一滴も口にしない、おそろしい飢渇《きかつ》から救われたからだ。カークが砂川《サンド・リヴァ》の下の粘土層のうえが、地下流だというのをやっと思いだしたからである。ほかにも、ここへくると大枝をもってきて、ささやかながら小屋も建てられた。そうして、熱射も避け、水も手に入れ、ときどき鳥をうっては腹をみたす。が、なにより困ったのは青果類の欠乏で、そろそろ壊血病の危険が気遣《きづか》われるようになってきた。
 すると、ちょうど六日目の午後に、一台の飛行機が上空に飛んできた。待ちに待ったアメリカ地学協会のものらしい。三人が飛びだして上着をふっていると、その飛行機からすうっと通信筒が落ちて来た。駆けよって、ひらいてみると、明日午後に――と書いてある。ながい惨苦ののちにやっとモザン
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