カて、法水を見ると、そこにはいつも変らぬ、鉄壁のような信念が燃えているのであるから、いよいよもって、その心理劇の正体が朦朧《もうろう》としてしまい、知りつつ――そこを迷路と承知しながらも、検事は足を引き抜くことができなくなってしまうのだった。
やがて、ウルリーケは家の中に去ってしまったが、検事だけはひとり残って、ぼんやりと海景を眺め暮していた。それは、法水が持ち出した混沌画の魅力に圧せられて、彼は模索の糸を、絶つことができなかったからである。
――ああ法水がキッパリと云い切った態度からは、毫《ごう》もいつものように術策や、詭計らしい匂いが感ぜられなかった。
のみならず、彼の神経といえば、それこそ五|浬《マイル》先の落ち櫂《かい》さえも見遁《みのが》さぬという、潜望鏡のそれよりも鋭敏ではないか。
そうすると、事によったら、彼の眼に映じたものは、生きながら消え失せて、「|鷹の城《ハビヒツブルグ》」の悪霊と呼ばれるシュテッヘ大尉ではなかったか。
それとも、まだ名も姿も知られていない何者かが、しかも帆桁《ほげた》は朽ち船員は死に絶えても、嵐と凪《なぎ》を越え、七つの海を漂浪《さすら》
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