られてくる。そしていまにも、その悲愁な謎を解くものが訪れるのではないかと考えられた。
その四人は朝枝を加えて、やや金字塔《ピラミッド》に近い形を作っていた。
と云うのは、中央にいる諾威《ノルウェー》人の前砲手、ヨハン・アルムフェルト・ヴィデだけがずば抜けて高く、それから左右に、以前は一等運転士だった石割《いしわり》苗太郎《なえたろう》と朝枝、そして両端が、現在はウルリーケの夫――さきには室戸丸《むろとまる》の船長だった八住《やずみ》衡吉《こうきち》に、以前は事務長の犬射《いぬい》復六《またろく》となっているからだった。
そのヴィデは、はや四十を越えた男であるが、丈は六尺余りもあって、がっしりとした骨格を張り、顔も秀でた眼鼻立ちをしていた。亜麻色の髪は柔らかに渦巻いて、鼻は鷹の嘴《くちばし》のように美しいが、絶えず顔を伏目に横へ捻じ向けていた。その沈鬱な態度は、盲人としての理性というよりも、むしろ底知れない、こころもち暗さをおびた品位であろう。
ところが、ヴィデの頸《くび》から上には、生理的に消しがたい醜さが泛《うか》んでいた。頬には、刀傷や、異様な赤い筋などで、皺が無数にたたま
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