イタリー》軍を破ったことがあった。その後も、一八六六年にはクリストッツァの戦いで勝ち、海軍もまた、リッサ島の海戦と伊太利艦隊を破った! しかも、今次の大戦においても、どうであろうか。じつに、わが国は伊太利軍には一度も敗れたことはないのである。その歴史的信念を忘れ、決戦に怯気《おじけ》だった、軍主脳部こそは千|叱《だ》の鞭《むち》をうけねばならぬ。
 この、マリア・テレジヤ騎士団の集会でおこなった演説を最後に、フォン・エッセンは二度と怒号しようとはしなかった。そして、秘かに、UR《ウー・エル》―4号の改装をはじめたのである。
 こうした経緯《いきさつ》が、言葉を待つまでもなく、七人の復辟《ふくへき》派には次々と泛《うか》んでいった。まるで、ウルリーケの一言が礫《つぶて》のように、追憶の、巻き拡がる波紋のようなものがあったのである。
「そうして、UR《ウー・エル》―4号の改装が終りますと、次に私を待っていたのが、悲しい船出でございました。私はあの前夜に慌《あわただ》しい別れを聴かせられたとき、その時は別離の悲しみよりか、かえって、あの美しい幻に魅せられてしまいましたわ。
 あの蒼い広々とし
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