かけて、ズグナ・トルタ山、マッギオ山、カムポ山、アルメンテラ山を経て、コロー山にわたる伊軍第一陣地は、夕刻までに大半破壊されてしまった。
 その頃には、南方チロール地区隊、ギヴディカリー部隊を先頭に、歩兵が行動を開始した。ケーブエス軍は、一部をアディジェ河谷に、主力をアスチコ河谷に向けて、アルシェロ市を目標とした。また、ダンクル軍は、一部をスガナ河谷に、主力をチエッテ・コムニ高原に向け、これはアジアゴ市を目標とした。
 そして、猛烈な火砲戦に、算を乱し、潰走する伊軍を追うて、まもなく、その両市を占領することができた。
 が、墺太利《オーストリヤ》海軍にとると、この大勝禍いなるかなであった。おそらく、両国の勝敗が、陸戦で決せられるものと見込んだのであろう、いつのまにやら、燃えていた必戦の意気が消えてしまった。しかしその後は、戦線にも格別の変化がなく、ただ伊軍は、じりじりと墺軍を押し戻していった。
 それが、決戦派の首領、男爵フォン・エッセンには耐《たま》らなかったのである。彼は、機さえあれば怒号して、軍主脳部に潜航艇戦をせまったのであった。
 ――わが国は、かつて統一戦争の当時、伊太利《
前へ 次へ
全147ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング